アパートの部屋を借りるとしたら家賃と間取り、それに近くに駅やコンビニはあるかといったロケーションが重要だ。
それらの条件が最高にマッチしたとしても、「でもあの部屋、実は事故物件でして…」と言われたら一度すべてが白紙になる。
どんなに科学が発展し、どんなに高い教育を受けたとしても、自殺や殺人事件のあった部屋にはナニカを感じてしまうから、そこに住むというのは心理的なハードルが高すぎる。
でもそんな部屋だと、家賃はだいたい2~30%ほどお安くなるから、霊感とお金の無い人にはお得物件ではある。
オリハルコンのメンタルを持つさみしがり屋なら、「話し相手付きなんてステキ」とポジティブに思うかも。
日本ではそんな不幸が起きた場合、物件を管理する側がお坊さんなどを呼んで除霊をすることがある。
アパートで住民が自殺することは海外にもあるはずだし、そんな部屋を不気味に思う気持ちも人類共通のはず。
それなら不安を打ち消すために、海外でも事故物件に除霊をするかもしれない。
もしそんな儀式をするとしたら、それにはきっとその国の伝統的な価値観や文化が表れている。
そんなコトに興味をもったんで、このまえモンゴル人(20代・女性)と「はなまるうどん」に行った時に話を聞いてみた。
モンゴルでは仏教を信じる人が多く、伝統的に仏教が人びとの価値観に影響を与えてきた。
死んだら生まれ変わる輪廻や、良い(悪い)ことをすれば、それは自分に返ってくるという因果応報の考え方があるから、キリスト教やイスラム教と比べれば、日本人と価値観や考え方で共通する部分がある。
でも、モンゴル人に「事故物件と除霊」について聞てみると、そんな話は聞いたことないからワカリマセンと言う。
命を大切にする仏教の考え方があって、そもそもモンゴルで自殺は少ないから、事故物件をどうするかなんて聞いたことがないと。
*ネットで調べると、モンゴルの自殺率は日本よりは低いけど、世界的には高いレベルにある。
ということで話はそれで終了。
…と思ったら、「モンゴルでは、日本は自殺率が高いことで有名です」と言い出す。
たしかに世界の中で日本はその割合が高くて、昔から深刻な社会問題になっている。
そう言えば、ちょうどいまは自殺予防週間の真っ最中だ。(9月10日~16日)
自殺者数の最も多い3月は「自殺対策強化月間」になっている。
ただローガン・ポールという世界的に有名なバカユーチューバーが、青木ヶ原樹海を「スーサイド・フォレスト(自殺の森)」と面白おかしく取り上げたこともあって、海外で「日本=自殺大国」のイメージが誇張されているような気もする。
日本について、そんなネガティブなイメージがあるのはまえから知ってたし、いまさら外国人に指摘されても「まあそーですね」としか思わん。
するとモンゴル人がおもしろいことを言う。
「日本では自殺が多い」というイメージからモンゴルでは、日本へ行った人と会うと「じゃあ、幽霊を見ましたか?」と聞くことがよくあるらしい。
自殺じゃなくて、日本を「幽霊大国」とする見方があるというのは初耳だ。
なんでそんなイメージができたのか?
まず仏教の考え方で、自殺した人はこの世にとどまることが多いという。
それは分かるとして、予想外だったのは「四方を海に囲まれている日本には、幽霊の”逃げ場”がない」という斬新な説。
なんでも360度草原の広がるモンゴルでは、霊は自分の好きな方向へ移動することができるけど、水を越えることはできないから、島国の日本では幽霊がどんどん増えていく。
そんな発想から、いつしか「日本へ行くと高い確率で幽霊を見る」という都市伝説ができて、ちまたで広がっているという。
モンゴルの情報サイト「モンゴルのぞき見」でも、日本にいるモンゴル人がそんな話をしている。
「日本は自殺と幽霊の大国だった」と言われると、国自体が事故物件みたいで住みたくなくなってしまう。
でも、まあどーでもいいか。
そのモンゴル人もそんな日本のウワサについては半信半疑で、「見たい」と「怖い」が心の中で互角の戦いを演じている。今のところ幽霊なんて見たことない。
でも今回、事故物件と除霊の話を聞いて、やっぱり日本はそういう国なんだと彼女は確信してしまった。
まあ元寇には勝ったし、いいとするか。
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